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小さな同窓会

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『間もなく鹿児島空港に着陸いたします』
機内アナウンスに、還暦を祝う旅の女性四人の心は高揚する。桜島が見える!一人が声を上げた。
 仲良し四人組は、高校時代同じクラスで学んだ。大学まで進学したのは一番成績優秀だった希代子一人。後の三人は高校卒業後、証券会社・ゼネコン・保険会社に就職した。
 空港でレンタカーを借りた四人は、カーナビで千巌園を目指した。島津のお殿様の別邸だったという千巌園は雄大な桜島を間近に見る壮大な庭園である。保険会社に就職した房江は、一番先に結婚した。桜島を眺め涙を流す房江に皆が『どうしたの?』と聞いた。房江は、胸のポケットから定期入れを取り出した。中に30代とみえる女性の写真がある。
『私の娘、輝子。私の最初の子で、生まれる時難産で脳性麻痺になったの。三年後に妊娠した時、私生む勇気がなかったの。そしたら主人が、輝子は遺伝性ではないのだ。次の子はきっと丈夫な子だ。と言うので出産したの。それが二女の裕子。裕子は優しい子で、姉の輝子を良く面倒を見てくれて、自分のわがままは言わない娘だった。
それからまた三年して長男の隆之が生まれて、この子も輝子を大切にしてくれたの。裕子が中学生で隆之は小学生の時、主人が肝臓がんで亡くなったの。私は輝子がいるから働きに出る訳にゆかなくて、自宅で書道教室をしながら生活を支えたわ。
裕子は高校を卒業して福祉施設で働き、隆之は国立大学の医学部に進学して、周産期医学の医者になっているの。二年前輝子は風邪から肺炎になり、主人の所に逝ってしまった。 
今回お誘い頂いて、隆之が旅費とお小遣いを、裕子はこの定期入れに輝子の写真を入れて、送り出してくれたの。
希代子は夫の姑と上手くゆかず、離婚した苦しみを。ゼネコンに就職した英子は、息子が万引きと薬物使用で警察に補導された苦しみを。証券会社に就職して職場結婚した道子は、長男誠を小学校一年の時、交通事故で亡くした苦しみを。それぞれが鹿児島の旅に抱えて来たのだ。
 指宿温泉の露天風呂で目の前に広がる錦江湾と開聞岳の夕日を見ながら、誰いうとなく、『人生って色々な事があるのね。でも大自然は変わることなくこんなに優しい。来て良かった』一番星が輝いている。

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