皆様こんにちは、細川です。いかがお過ごしですか?
この頃の指宿は初夏のような暖かな日があるかと思えば、2月らしい冷え込みの日もあったりと、体感的にもビジーな毎日です。皆様のところもそうでしょうか?体調にはくれぐれもお気を付けくださいませ。
それでも見える景色には日に日に春の訪れを感じられて、毎日のように通る道の土手にも青々としたスギナがたくさん生えていました。スギナは「つくし」の成長した姿。ということは、ここにはつい最近まで「つくし」がたくさん出ていたということで。。えー!どうしてもっと早くに気が付かなかったかしら、つくしんぼが揃って並ぶ可愛らしい姿を見たかったのに、と残念でなりません。でも、なにかが成長していく一瞬の輝きほど、実は静かで密やかで気付きにくいものなのかも。さすが「土筆」見事なまでの土手との同化でした。これをお読みの皆様は間に合いそうならお見逃しなく!
さて、指宿ロイヤルホテルの中でも、春の準備が着々と進んでおります。
今日は春限定のドリンクの試作&写真撮影に、3月の桃の節句にあわせての、ひな飾り。
長年のパートナー綾美ちゃんと、隠れパッションフルーツ名人下川路さんと一緒にお飾りしました。
三月三日のひな祭りにも、鹿児島にはユニークな伝統が残ります。ひな壇の上に吊るされている紅白の対の鞠は「金助鞠(きんすけまり)」と言う鹿児島の郷土玩具。この大きな鞠を天井から吊るして飾るのが薩摩の伝統的なひな祭りで、お祖母さんが生まれた孫の為に作ったものや、親戚や親しい人からもお祝いに贈られたいくつもの鞠が床の間を飾ったと言われます。
指宿ロイヤルホテルの金助まりは、今は亡き母方の祖母が、母と私の為に作ってくれたもの。ひな壇の上から吊るして飾るために軽くなくてはならないので、祖母はカイコの繭ほどの大きさの発砲スチロールをまとめて芯とし、その上に幾重かのちりめん生地をかぶせながら球形に縫い合わせ、金糸や絹糸で絵柄を刺繍して作っていました。祖母からは「絹糸で絎ける(縫い目が出ないように縫う)」ことから「絹絎け(きぬくけ)鞠」が金助まりの名の由来と聞いておりましたが、かつて薩摩武家の妻たちが家計を助けるため(金助)に作成したとの説もあるようです。
金助まりに描かれる柄は、贈る相手の幸せを願い「縁起の良いもの」とされ、今回飾ったのは赤が鳳凰、
白が牡丹に唐獅子の絵柄になっています。
祖母の作品の中でも最も好きな一対です。鞠が大きく絵柄が複雑であるほど製作期間も長くなるので、記憶のなかの祖母はいつも金助まりを作っていたように思います。
幼さと祖母への甘えから、昔はあまりよく見てこなかった金助まり。今日は春の日差しのように眩しくて、抱き上げるとなんともあたたかでした。
もうほんと、逃したくない大事な時間ほど、後になってから気付くものなんだから。
ひょっとしたらそんな小さな後悔と、もらった愛情への恩返しを「伝統」と呼ぶのかもしれないです。薩摩のひなまつり、ぜひ見にいらしてください!
祖母と、お待ちしております。
皆様の旅が、今日も素敵なものになりますように。
指宿ロイヤルホテル
細川ゆり